🔵 出会いとはじまり
美しいものや好きなものを側において暮らしてみたい。子供の頃から何となく思っていた。思えばそれがスタートだった。
運動が苦手、外遊びよりいろいろな事を想像して遊ぶのが好き、そして何より母とデパートでのお買い物が楽しみ・・・それは今でも大好き。大人になっても「美しいもの」がいつも頭の中のポケットの隅っこにあった。
結婚することになった時、義母がダイニングテーブルセットをプレゼントしてくれた。都会暮らしの中で、私の過ごす時間の殆どは、ダイニングテーブルとの関わり。いつか自分の選んだお気に入りのテーブルを使いたい・・・と思うようになった。それがどのようなものなのか?頭のなかで得意のはずの想像ができていなかった。お買い物をするとき、一目で好きか嫌いか、その事ははっきりしていたので、テーブルに出会えばきっと分かるはず、そう思いながら、実際に購入するまでは相当な年月がかかりました。
途中、もう出会えないかもと諦めかけていた時期もあったけれど、ある日から次々を出会えることになろうとは・・・・・。
デパートの家具類の催事にはできるだけ行った。1990年代ころ、象嵌細工のイタリア家具やフランス家具が多く出ていたと思う。
華やかで綺麗と思うが、私が欲しいものとどこか違うような?・・・その繰り返し。何が欲しいかはっきり分からないまま、もう出会えないのだと何度も諦めかけて時が過ぎていきました。
新宿のデパートでアンティークの催事があるという広告を見て、行ってみました。
催事会場に入ったとたん目に入ったものは、品物でなく美しいお人形の様な女性の出店者だった。会場はいろいろな店がそれぞれガラスケースを並べ、品々を展示していました。アンティーク初心者の私は、次々とケースの中を観て回りました。あの女性の店にも行ってみたいと思いましたが、他の店の人たちとは違う彼女の気品がオーラを出していて、何の知識もない私なんかが話すことは無理だろうと感じました。閉店時間がせまり、やはり諦められず、その女性の店のショーケースを観るように近づき、内心緊張でガタガタでしたがほんの少し話をしたと思う。
一ヶ月ほど経ってから銀座のデパートでアンティークの催事がある事を知り行ってみました。会場で一番先に目に入ったのは、またあの時の女性。気負いはありましたが、ケースを覗く感じで店に行き、話しかけた。品物も勿論魅力でしたが、あの新宿以来、私の心に残っていた女性でしたので、ハラハラしながらも精一杯のポーカーフェイスで、新宿の催事でお見かけしたことやそのとき少しお話したことなどを話ました。そして、私のことを覚えてくれていて嬉しかったという気持ち、この「覚えていれくれたのだ」ということにすごく感動的で素直な気持ちになりました。その女性は自分の出会ってきた品々を「美しいでしょう」と言い、彼女の美しいものへのこだわりと自分が選んだ品々をとても愛している気持ちが伝わってきました。
私はオールドノリタケのデミタスカップの愛らしさに惹かれ、アンティークデビュー第一号を購入しました。その日の夜の私は、その時どのような会話をしたか、繰り返し繰り返し思い返すほど刺激的な時間でした。
アンティークの店を開いている方々は、「品々を大事にしてくれる人、品々が行きたい人のところへ行く」をよく言われます。はじめは社交辞令だと思っていました。だけど不思議、ものと出会うのは確かに想像を超えた物語がついてきます。「なに?」、と感じた品を見つけた瞬間、「これは私に」と決める一瞬の出会い。lそしてその品を仕入れた方に必ずお尋ねすることがあります。初めて見たときどのように感じて、どのように仕入れられたのかと。お聞きしているうちに、私も一緒に仕入れに行き、出会ったがように次々をそのシーンが自分のなかで絵になり、頭のなかに浮かんでくる。どんな人たちがどのように使われていたの?想像が大好きな私にとっては至福の時を与えられるのです。
自分の部屋のなかで「みんな待っててね!」と、私がお出かけするときのあいさつ。もしそんな私を人が見ていたら・・・、でも、美しいものに癒されることを経験したらそういう想いになります・・・。